平成30年第3回定例会で伊藤浩士議員が代表質問

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1 交通政策について
(1)市原市地域公共交通網形成計画とまちづくりについて
市長は、どのような思いをもってこの計画を策定し、これからの事業展開により目指す将来都市構造である

コンパクト・プラス・ネットワークのまちづくりを実現していくのか、考えをお聞かせください。

小出市長 私は、活力ある地域社会を維持し、誰もが夢と希望を抱き、住み続けられるまちづくりを推進するため、市原市総合計画を策定しました。
この実現に向け、中心都市拠点、都市拠点などの機能を高めるとともに、周辺都市や各拠点間、各拠点と周辺市街地等を有機的に結びつける多極ネットワーク型コンパクトシティを目指しております。
そのためには、将来のまちづくりと整合を図るとともに、今まで以上に福祉や観光、環境等、各分野の施策と連携し、新たな視点で公共交通ネットワークの形成に、取組んでいく必要があります。
これまで、本市では、全国的にも先進的な取組である、地域主体によるデマンドタクシーの導入等、新たな施策を打ち出し、実現してまいりました。 
この取組が高く評価されて、国土交通大臣表彰を頂いたところでございます。
私は、これらの実績を踏まえ、本市のまちづくりに欠くことのできない、公共交通ネットワークの形成を何としても成し遂げるとの強い思いを持って、現在、「市原市地域公共交通網形成計画」の策定を進めているところであります。
今後、市民や交通事業者等の多くの方々と連携し、公共交通の機能強化や交通空白地域対策、地球に優しい交通環境づくりなど、各種施策を推進することで、目指す将来都市構造であるコンパクト・プラス・ネットワークによる、新たなまちづくりの実現に向け、全力で取り組んでまいります。

市の現状をどのように把握し、どのような所に重点を置いて施策をまとめられたのか見解を伺いたい。

都市部長 「市原市地域公共交通網形成計画」は、市原市総合計画と連動し、都市計画マスタープランや立地適正化計画等との整合のもと、持続可能な公共交通ネットワークの形成を推進するためのマスタープランとして、現在、策定を進めているところでございます。
本市の現状につきましては、地域別の人口推移や通勤・通学等における人の流れをはじめ、観光入込客数、鉄道・バス等の利用者数などのほか、公共交通に関する市民アンケート調査を実施するなど、幅広い視点をもって把握に努めてまいりました。
その結果、拠点や地域を相互に連携する公共交通ネットワークが不足していることや、バス路線の減便や休止等の状況から持続可能で利便性の高い地域公共交通を維持確保する必要があること、さらには、過度な自家用車利用から公共交通機関への転換を推進する必要があることなどの課題が見えてまいりました。
これらを踏まえ、将来のまちづくりとの整合のもと、福祉や観光、環境分野との関連計画との連携させることで、将来に渡って安心安全な公共交通網を構築するため、「ひととまち、未来をつなぐ持続可能な公共交通ネットワークの確立」を基本理念に掲げました。
その実現にあたりましては、「コンパクト・プラス・ネットワークを推進する公共交通ネットワークの形成」「多様な主体との連携による持続可能な移動手段の確保」「公共交通の利用促進に向けた環境づくり」「観光資源を活かした二次交通の創出」「人と地球環境にやさしい交通環境づくり」の5つの視点に重点を置き、交通結節点や公共交通網の機能強化、新たな交通システムの充実、自家用車からの転換、バリアフリー化の推進等、各種施策を取りまとめたところでございます。

現在、コミュニティバスやデマンドタクシーは市民主体の運営協議会で運行されているが、市は現状をどのように把握し、この計画の中で支援体制をどのように展開していくのか見解を伺いたい。

都市部長 現在、市内の5地区において、地元の運営協議会が運営する、コミュニティバスやデマンドタクシーが運行しております。
運営協議会では、定期的に会議を開催し、収支の管理や利用状況の分析、また、広報紙の作成等、利用促進につなげるための取組みについて話し合い、市といたしましては、会議に必ず職員が参加し、必要な助言を行うなど運行の改善に努めているところでございます。
運営の状況につきましては、毎年、実績報告書を提出していただき、その中で収支の状況や活動実績などを確認しておりますが、更なる利用者の拡大等の課題はあるものの、全ての地区で概ね適正に運営されているものと認識しております。
今後の、支援体制の展開につきましては、本計画においては、既に運行している運営協議会につきましては、地域の公共交通という意識をもって、精力的に運営して頂いておりますことから、引き続き、人的、財政的な支援を行ってまいります。
また、路線バス等の公共交通が運行していない他の地域に対しましては、本市の取組事例などを職員が直接赴き紹介し、真に必要な公共交通を考える機会を設けることで、地域主体の公共交通システムの導入につなげてまいります。

(2)福祉的観点からの交通について
「市原市バリアフリー基本構想」を、どのような理念と目標を持ち策定したのか伺いたい。

都市部長 本市では、これまで「市原市バリアフリー基本構想」に基づき、公共交通や道路、建築物等のバリアフリー化を推進するとともに「心のバリアフリー」に取り組むなど、「ハード」、「ソフト」の両面からバリアフリーの推進に取り組んでまいりました。
その結果として、「ハード面」では、JR3駅及びちはら台駅周辺を重点整備地区に位置づけ、優先的に整備することで、鉄道駅舎や公共施設、道路、公園、交通安全施設等のバリアフリー化が推進されました。
また、「ソフト面」では、市民ボランティア団体等による、心のバリアフリーの啓発活動により、互いに助け合い、支え合う意識の醸成も進んでいるものと考えています。
しかしながら、今後、到来する、本格的な超高齢社会においても、都市を持続的に発展させていくためには、将来のまちづくりとの整合を図りながら、更なるバリアフリー化の推進を図る必要があります。
そこで、市原市総合計画が目指す、「誰もが住みやすく、活躍できる、魅力あふれるまち」の実現に向け、「誰もが暮らしやすく 共につながり支え合う バリアのないまち いちはら」を基本理念とする、新たな「市原市バリアフリー基本構想」を今年3月に策定いたしました。
この計画の実現にあたりましては、「コンパクト・プラス・ネットワークの推進」、「互いに助け合い、支えあう意識を醸成する心のバリアフリーの推進」、「多様な主体と連携したユニバーサルデザインのまちづくりの展開」の3つの基本方針に基づく各種施策を、市民や事業者の皆様等、多くの主体との連携のもと着実に取り組んでまいります。

鉄道、バス、タクシーなどにおけるバリアフリー化の現状と課題を把握し、基本構想では課題にどのように対応しているのか見解を伺いたい。

都市部長 先ず、現状と課題についてでありますが、鉄道は、JR3駅と京成ちはら台駅については、自由通路及び駅構内ともにエレベーターが設置されており、JR3駅については、ホーム上で、視覚障がいのある方に、ホーム側と線路側を区別していただくことが可能となる、内方線付き点状誘導ブロックの整備を進めているところであります。
一方、小湊鉄道五井駅につきましては、エレベーター等は未整備でありますが、鉄道職員はバリアフリー教育に取り組んでおり、障がい者の方など、補助を必要とする利用者に対して、適時、職員が介助するなどをして対応しております。
次に、路線バスについてでありますが、本市に乗り入れているバス事業者のノンステップバスの導入割合は、2016年度末の44.9%から、2017年度末は48.1%へと、着実に増加しております。
続いて、タクシーにつきましては、車イスや寝台に横になったまま乗車いただける福祉タクシーを、市内5事業者が運営し、11台保有しております。
今後、本格的な超高齢社会を迎える中、鉄道駅や車両等のバリアフリー化のさらなる推進や、ソフト面の取組である「心のバリアフリー」のより一層の推進が求められております。
そこで、バリアフリー基本構想における対応につきましては、交通事業者に対し、引き続き、内方線付き点状誘導ブロックの設置や案内施設のユニバーサルデザイン化、ノンステップバスの充実等を、国の補助金制度を活用しながら促進するよう、積極的に働きかけてまいります。
併せて、社内マニュアルの作成や社内研修の開催等、心のバリアフリーの取組を促進し、ハード、ソフト両面から公共交通のバリアフリー化が進むよう、交通事業者と連携して取り組んでまいります。
日大の学生などの協力のもと行なったまち歩き点検の結果を受けて、重点整備地区における整備をどのように進めていくのか伺いたい。

都市部長 まち歩き点検の結果につきましては、誘導ブロックの欠損や分断による不連続、沿道植栽のはみ出しや路上の障害物、駐輪などによる通行の妨げなど、様々な課題が明らかになったところであります。
この点検結果につきましては、点検後のワークショップで総括した上で、市民や交通事業者、関係行政機関等で組織する「バリアフリー推進協議会」に報告し、関係者間で課題を共有するとともに、「バリアフリー基本構想」の策定において、重点整備地区での取組みに反映したところであります。
主な取組みといたしましては、経年劣化などにより誘導ブロックの連続性が損なわれている個所や、路面の段差及び凸凹については、順次対応すること、また、誘導ブロック上の障害物等については、施設管理者に改善依頼を行うとともに、「心のバリアフリー」による啓発活動の強化を図っていく、などでございます。
これらの取組みにつきましては、庁内の「バリアフリー推進調整会議」を通じて進捗状況の確認や調整を行いながら、着実に推進を図ってまいります。

心のバリアフリーに対する施策をどのように展開していくのか考えを伺いたい。

都市部長 バリアフリーは、道路や施設の整備を進めることも必要でありますが、障がいを持った方がどのように感じているかを理解し、お互いを助け合う「心のバリアフリー」を推進していくことは重要な取組であります。
心のバリアフリーの活動といたしましては、市民ボランティア団体である「市原市バリアフリーワーキング市民グループ」の方々は、小・中学校や図書館、アネッサなど様々な場所に出向き、児童・生徒や市民の皆様に疑似体験会を実施されております。
この疑似体験会では、車いす体験や、アイマスク体験、また、高齢者の疑似体験などを通じて、「相手の気持ちになって考え、行動するとはどういうことか」を考えたり、「誰もが住みやすい社会について自分たちの出来ること」を考えたりする貴重な機会となっております。
本市といたしましては、より多くの方が体験会に参加することで、見守りや声かけなどの実践に繋がるよう、市民団体が実施する障がい者疑似体験会等の活動を支援してまいります。
今後もバリアフリーに関する知識や気づきの共有を促すため、市民や行政の取組を市の広報やホームページ等で情報発信し、継続的な啓発活動の実施に努めてまいります。

(3)観光振興と交通について
観光における現在の状況と交流人口500万人を目指すためのこれからの施策展開、そして観光地に訪れる方々が利用する二次交通に対するこれからの施策について当局の見解を伺います。

経済部長 はじめに、現在の状況とこれからの施策展開でございますが、市では観光振興ビジョンに基づき、観光入込客数の約半数を占めるゴルフ客の増加に向けて、市原市ゴルフ場連絡協議会と連携し、市内のゴルフ場33コースを巡るスタンプラリーを実施するほか、ゴルフを始めるきっかけ作りとして、未経験者や小学生を対象とした手ぶらdeゴルフなどを実施しております。
また、君津市、大多喜町との広域連携による「房総さとやまGO」を運行するとともに、県が実施する「サンキューちばフリーパス・フリー乗車券」とも連動し、新たな観光ルートの創出に努めているところでございます。
こうした取り組みなどにより、平成29年の観光入込客数は、前年比、約5万5千人増の356万1千人となっております。
今後は、これまでの取り組みを一層推進するとともに、市原市観光協会等と連携し、里山や自然を活用した「体験・交流型」観光メニューの創出や、地磁気逆転地層など新たな資源も積極的に活用した観光誘客を図り、さらなる交流人口の拡大につなげてまいりたいと考えております。
次に、観光地の二次交通対策といたしましては、現在、小湊鉄道の上総牛久駅、高滝駅、里見駅、月崎駅、養老渓谷駅にレンタサイクルを配置するとともに、サイクリングマップを作成し、本市の里山を楽しんでいただいております。
また、今年の春に開催されましたアートいちはら2018春においては、市原市観光協会がボンネットバスを活用し、月崎駅、クオードの森、田淵地先を結ぶ周遊バスを運行し、利用者から好評を得たところであります。
今後は、これらの成果等を踏まえ、観光動向や近隣市等の状況も勘案しながら、二次交通のあり方について検討してまいります。

(4)これからの交通の多様性について
これからの交通の多様性について、計画の中でどのような施策を掲げているのか考えを伺いたい。

都市部長 本格的な人口減少、少子高齢社会を迎え、公共交通を取り巻く環境は厳しさを増し、路線の減便や廃止、サービス水準の低下等が懸念される中、ひととまちを将来に渡って持続的に繋いでいく、安心安全な公共交通ネットワークの形成は、重要な取組みであります。
本市におきましても、従来の交通事業者によるバス交通等に加え、コミュニティーバスやデマンドタクシーなどの地域住民による新たな交通システム、また、福祉有償運送や送迎ボランティアサービスなどの福祉事業者やNPO等が行う移動支援等、様々な取組みが始まっております。
しかしながら、議員ご指摘のとおり、最近では、若者の車離れが進んでいることや、運転免許の自主返納者が年々増加していることなどを鑑みますと、公共交通を含む、他の交通手段への転換は、必要不可欠な取組みであります。
現在策定を進めている、「市原市地域公共交通網形成計画」におきましては、五井駅を中心に大型商業施設などを結ぶ循環バスの導入、スクールバスの生活交通への活用、新たな観光需要に対応するバスの運行、高速バスターミナルを活用したカーシェアリングの導入、渋滞緩和など都市空間の魅力向上のためのコミュニティサイクルの導入など、新たな交通手段やシステムについて検討することを位置づけることとしました。
これからの交通における多様性の確保は、すべての人が利用しやすい交通環境を整えるためには、大変重要であると考えております。
今後は、技術革新に伴う新たなサービスやモビリティの開発・実用化なども想定されますことから、積極的に情報収集に努め、有効な施策は本計画に位置づけることで、多様性に配慮した公共交通ネットワークの形成に取り組んでまいります。
2.環境対策について
(1) 市原市環境基本計画と市原市地球温暖化対策地域推進計画について
市原市環境基本計画が策定されましたが、当局はどのような理念をもたれて、この計画に対する目標をどのように設定されたのかお伺いいたします。

環境部長 本市では、環境の保全と創造に関する方策を総合的、かつ計画的に進めるとともに、市原市総合計画が掲げるまちづくりを環境面から推進するために、2017年3月「市原市環境基本計画」を策定いたしました。
この計画におきましては、市民一人ひとりが、環境課題の解決に向けて自らが積極的に行動し、いちはらの豊かな自然や都市、歴史などの魅力ある地域環境を誇りに思い、持続可能な社会を将来世代に引き継ぐために、「誇りのもてる 環境を 未来へ」を基本理念として定めたところでございます。
近年、地球環境問題をはじめ、ごみや、騒音、悪臭といった都市生活型の公害、生物多様性や自然環境の保全など、様々な環境課題への対応が求められております。
これらの課題を解決し、基本理念である「誇りのもてる 環境を 未来へ」を実現するため、地球環境、生活環境、自然環境、文化環境を保全する4つの基本目標を定めるとともに、市民や事業者などとの連携・協働について、5つ目の目標として、市民参加・学習・協働の推進を定めたところでございます。
市民の環境に対する意識の醸成と、市民や企業との協働について、これからどのような施策を展開するつもりなのか、お聞かせください。

環境部長 市原市環境基本計画の基本目標の一つに掲げました、市民参加・学習・協働の推進では、市民、事業者、市の各主体が、自主的に連携・協働して、環境保全に取り組む社会を目指しており、議員ご指摘のとおり、市民の環境に対する意識の醸成を図ることは、ひいては、市民や事業者との協働を発展させることに繋がることから、大変重要であると考えております。
本市では、市民や事業者と協働し、環境にやさしい持続可能な社会を実現させるため、ボランティア清掃など環境美化活動の実施や、緑のカーテンの設置、「いちはら環境フェスタ」の開催など、様々な事業を実施してきたところでございます。
今後もこうした事業を引き続き実施するとともに、市民や事業者との協働が一層進むよう、あらゆる主体が連携して環境保全を目的とした行動の輪が広がるような施策の展開に努めてまいります。

市原市地球温暖化対策地域推進計画はどのような目的と目標を持たれて作られたものなのかお伺いします。

環境部長 2015年、パリで開催されました国連気候変動枠組条約第21回締約国会議、いわゆるCOP21において、パリ協定が採択され、加盟する196か国すべての国が参加し、世界の気温上昇を産業革命前から2℃未満に抑えることを目標に掲げました。
これを受けて、2016年度に国では「地球温暖化対策計画」、千葉県においては「千葉県地球温暖化対策実行計画」が策定され、2017年度に本市におきましても、地域の自然的社会的条件を踏まえ、「市原市地球温暖化対策地域推進計画~いちはら低炭素社会プラン~」を策定したところでございます。
この計画は、本市の温室効果ガスの排出抑制等を行うための総合的な計画であり、市民・事業者・行政の協働で環境負荷が低減された低炭素社会の実現を目指すこととしております。
また、本市における温室効果ガスの排出削減目標は、2013年度を基準として2030年度までに、11%削減を目指すものでございます。

この計画において、市は市民や事業者とともにどのような具体的施策展開を考えているのかをお聞きします。

環境部長 地球温暖化対策地域推進計画を策定するにあたり実施しました市民アンケートの結果から、議員からご紹介いただきましたとおり、「地球温暖化・気候変動への関心がある」、または「地球温暖化の進行が危機となる」とお答えいただいた方が約9割に上ることから、地球温暖化対策の重要性については、多くの方々に理解されているものと考えております。
今後は、本計画に掲げる「再生エネルギーの利用促進」や「ライフスタイル・ビジネススタイルの変革」「コンパクト・プラス・ネットワークの推進」「森林・みどりの保全及び緑化の推進」の4つの視点に基づき、各施策に取り組んでまいります。
この4つの視点のうち、「ライフスタイル・ビジネススタイルの変革」における具体的な取り組みの一例といたしましては、省エネ・低炭素型の製品・サービス・行動など、地球温暖化対策に資するあらゆる賢い選択である「クール・チョイス」という新しい考え方を浸透させることにより、市民や事業者とともに低炭素社会の実現を図ってまいります。