1 市長の政治姿勢について
(1)市政運営について
令和元年房総半島台風等の一連の災害や新型コロナウイルスなど、非常に過酷な状況下において、市長あいさつで、大切なものを
「守る戦略」、未来を見据えた「攻める戦略」という2つの戦略を示された。この2つの戦略を掲げた小出市長の思いを伺いたい。
小出市長 私は、一昨年の房総半島台風等の災害、そしてこのコロナ禍への対応を図る中で、改めて、当たり前だと思っていた日々の生活が、とても幸せなもので、何よりも大切なものであるとの思いを強め、市民の安心・安全の確保に全力で取り組んでまいりました。
あかちゃんから高齢者まで、全ての市民の方々の掛け替えのない命と生活を守ることが、市長としての使命であるとの思いから、市長あいさつで、大切なものを守るという「守る戦略」を掲げました。
一方、コロナ禍で浮き彫りになった課題を克服し、また、持続可能なまちを実現するために、今なすべきことを考え、実行することも、市長としての使命であるという思いから、未来を見据えた「攻める戦略」を掲げました。
私の座右の銘の一つに、「宿命に生まれ、運命に挑み、使命に燃える」という言葉があります。
沖縄県名護市の万国津梁館(ばんこくしんりょうかん)に建つ、故 小渕恵三 元内閣総理大臣の銅像の台座に刻まれています、小渕元首相がよく使われていた言葉です。
「宿命はどうすることもできない。しかし、運命に対して人は果敢に挑むことが可能であり、そのためには使命感がなければならない。自分の使命は何かを考えて運命に挑むべきである。」という意味と私は捉えております。
急速な人口減少・少子高齢化、そして災害、コロナ禍というタイミングで、私が市長を務めさせていただいていることは「運命」なのかもしれないと自分に言い聞かせております。
この運命に対して、私は、コロナ禍で大変な中、前を向き、頑張っておられる方々が必ず報われる社会を実現するという市長としての「使命」に燃えて、「守るべきは守り、攻めるべきは攻める」という覚悟を持って、果敢に挑んでまいります。
(2)予算編成について
貯金を取り崩すだけではいつか限界がくる。持続可能な財政運営を維持するため、どのような考えのもと予算編成を行ったのか伺いたい。
財政部長 令和3年度予算は、これまで経験したことのない非常に厳しい社会経済情勢下ではありましたが、編成にあたりましては、まずこの状況を庁内で十分に共有し、各部門が編成の厳しさを認識をした上で、要求額の一層の精査を図り、重点的取組事項への財源の重点配分を行ってまいりました。
また、歳入の柱である市税が大きく減少し、大幅な財源不足が見込まれましたことから、あらゆる財源対策を積極的に講じるほか、これまで以上に厳しい歳出の要求上限額を設定し、現場に一番近い各部局の創意工夫を経て、庁内一丸での予算編成に取り組んでまいりました。
このようにして編成いたしました令和3年度予算案につきましては、予算ベースの財政指標ではございますが、財政構造の弾力性を示す経常収支比率では、市税収入の大幅な減少により、99.7%と悪化しております。
しかしながら、将来負担すべき負債の割合を示す将来負担比率では、地方債残高の減額などにより、35.2%と改善が図られました。
また、財源として、財政調整基金の最大限の活用を図りましたが、議員ご指摘のとおり、取り崩すだけでは、持続的な財政運営は困難だと考えており、当初予算と連動して編成いたします令和2年度3月補正予算において、令和2年度で取り崩しを予定しておりました額を抑制することで、この基金の残高確保にも留意をいたしました。
このように、財政状況、社会経済状況を捉え、事業の選択と集中を図りながら、今必要な事業には的確に予算化し、また、将来負担や今後の安定的な財政運営にも十分配慮した予算編成に取り組んできたところでございます。
(3)緊急時における効果的な職員配置について
非常時に備えるため、柔軟かつ臨機応変な組織体制を構築することが望ましいと考える。非常時における職員の応援体制について、市ではどのように対応しているのか、伺いたい。
総務部長 大規模地震や風水害などの有事の際や、今般の新型コロナウイルス感染症ワクチン接種対応など、緊急的な業務が生じたとき、通常時の組織体制では、円滑な対応が極めて困難になる場合がございます。
このことから、緊急時には最も優先すべき市民の安心・安全を守るとの観点から、部門間を横断する体制の構築や、新たな組織編制にともなう柔軟な人員配置を行っているところです。
一昨年の災害対応時には、災害対策本部を中心に全庁を挙げて対応を図ったところですが、特にライフライン復旧の最前線となる部門へ応援職員を重点的に配置し、早期の復旧に努めてまいりました。
また、新型コロナウイルス感染症に係る事業につきましても、迅速かつ的確に事業を実施するため、時期に捉われることなく柔軟な人員配置を行い、特別定額給付金室や新型コロナウイルスワクチン対策室を設置しております。
一方、このような緊急時の対応は職員の負担も大きく、身体的・精神的な負荷を抱えながらも、市職員としての使命感を持ち、職務に精励しているところであり、特定の部署や職員へ負担を偏らせないためにも柔軟な人員配置が必要であると考えております。
今後も、非常時におきましては、職員の持つ力を結集し、バランスのよい効果的な組織体制を整え、市民の安心・安全を守るとともに、市民サービスを停滞させることのないよう、適切に対応してまいります。
2 新型コロナウイルス感染症対策について
(1)緊急事態宣言への対応について
1月7日の国の緊急事態宣言を受け、県内、近隣他市のほとんどが、午後8時以降のみを休館にする状況にある中、市原市は原則休館という強い措置を選択した。庁内でも様々な議論もあったと思うが、この決定の市の考え方を伺いたい。
保健福祉部長 昨年12月以降、全国で新型コロナウイルス感染症の感染が急拡大する中、本市におきましても、高齢者施設や接待を伴う飲食店、さらには病院でクラスターが発生し、1月の感染者数は12月の2倍以上となるなど、大変厳しい状況にありました。
このような中、国は、1月7日に、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、千葉県を含む1都3県に緊急事態宣言を発令いたしました。
本市では、この緊急事態宣言を受け、1月8日に特別措置法に基づく市対策本部会議を開催し、公共施設を原則休館することを決定いたしました。
議員ご案内のように、千葉県新型コロナウイルス感染症対策本部から発出された特別措置法に基づく協力要請を踏まえ、県内の市町村の多くは、公共施設を8時以降休館するとしております。
しかしながら、本市では、本市を含む県内の医療提供体制に深刻な影響が出ているという危機的状況を市民の皆様としっかり共有し、市として医療を守り、市民の命を守ることが最優先であると考え、不要不急の外出自粛や、人と人との接触機会を極力減らすためには、公共施設は原則休館にする必要があると考えたところです。
この決定にあたりましては、施設管理者や市民の皆様から様々なご意見があるだろうということも議論しましたが、感染拡大を抑え、医療崩壊を防ぐために市として何ができるのかと考えたときに、他の自治体よりも徹底した取組を選択したものであります。
緊急事態宣言の期限である3月7日まで、あと1週間余りでありますが、千葉県内におきましては、新規感染者数は減少傾向にあるものの、医療現場の窮状は脱しておらず、気を緩めてはならない状況にあるもと考えております。
市といたしましては、一日も早く安全・安心な市原市を取り戻すために、市民の皆様のご理解とご協力をいただきながら、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止に、しっかりと取り組んでまいります。
(2)ワクチン接種について
ワクチンの供給にはやや不透明感がある。国の計画では、今後、高齢者、一般市民へと接種が拡大されるとのことだが、現時点でのスケジュール、接種の手続について伺いたい。
保健福祉部長 現在、国立病院機構等に勤務する医療従事者の先行接種が行われており、これに続き、3月中旬には、全国で470万人程度と言われる医療従事者の優先接種が行われる見通しであります。
また、4月からは医療従事者の優先接種と並行する形で65歳以上の高齢者に対する住民接種が始まる見込みですが、4月中旬までに住民接種用に供給されるワクチンの量は限られており、4月19日までに千葉県に配送される予定数量は21箱、約2万回分であり、各市町村に対する配分は千葉県が調整することとされております。
加えて、国は、4月26日の配送分から全国すべての市町村に行き渡る数量を配送したいとしておりますが、具体的な数量は示されておりません。
国のこれらの供給計画は、ファイザー社製ワクチンを前提にしており、このワクチンの生産拠点が国外にあること、住民接種開始に当たっては、十分なワクチンの在庫を準備する必要があることなどから、4月の接種開始を見込んだ3月下旬の、接種券配送時期は追って指示するとされております。
次に、接種の手続きにつきましては、接種開始時期にあわせ、市はそれぞれの対象の市民宛てに接種券を配送し、接種券を受け取った市民は、市のコールセンター、もしくは、専用ウェブサイトから申し込み、接種場所や日時を予約していく流れを予定しております。
コールセンターにつきましては、市民会館の会議室棟4階に開設準備を進めており、3月1日に開設する予定です。
現状、ワクチンの供給が見通せない状況ではありますが、市といたしましては、ワクチンが4月に供給されることを前提に、対象となる市民が希望する場合に、確実に接種できるようしっかりと準備を整えてまいります。
持病を抱えている方は、かかりつけの医療機関で接種してもらうことで本人の不安を取り除くことができ、医師も適切な接種管理をすることができると思うが、市の見解を伺いたい。
保健福祉部長 持病を抱えている方が定期的に診察を受けている医療機関や、体調が悪いと感じた時に、まず相談をする自宅近くの診療所や病院、いわゆる「かかりつけ医」でワクチンを接種できるようにすることは、接種に対する市民の不安を軽減するほか、身近な医療機関で多くの方に容易に接種できる機会を提供できることから大変重要な視点であると考えております。
こうしたことから、ワクチンの接種体制の構築に当たっては、本市では市医師会をはじめとする医療関係者と協議を重ね、市内の約90の医療機関での個別接種と、個別接種を補完する位置づけで集団接種会場を常設型で数か所と、期日を限定して開設する巡回型の接種会場を設ける「市原方式」を構築することで合意形成が図られつつあります。
現状、ワクチン供給が不透明な状況にありますが、供給が安定した際は、ワクチン接種事業への参加を表明していただいている全ての医療機関で接種が行えるよう、引き続き、市医師会をはじめとする医療関係者と連携を密にして、準備を進めてまいります。
接種の受け方、予約の取り方、健康の不安がある場合、どこに相談したら良いのかなど、市民に丁寧に知らせる必要があると思うが市の広報計画について伺いたい。
保健福祉部長 多くの市民の皆様に、安心してワクチンを接種していただくためには、広報活動が大変重要であります。
ワクチンの供給が不透明な状況にありますが、まず、3月1日号の広報いちはらで、現在、想定しているスケジュールをお知らせし、併せて、コールセンターの開設をご案内してまいります。
また、情報配信メールや、SNS、ホームページ、町会回覧などの通常の広報活動に加え、接種券発送にあわせ、広報いちはら臨時号を発行するほか、高齢者施設やケアマネージャーの皆様に丁寧に情報を提供し、まずは、65歳以上の市民の皆様に対する優先接種を円滑にスタートできるよう周知を図ってまいります。
3 市原市SDGs戦略について
3つのリーディングプロジェクトに取り組むことで、経済・社会・環境の三側面において、どのような効果が期待できるのか伺いたい。
企画部長 SDGs戦略素案に掲げました3つのリーディングプロジェクトの狙いは、経済、社会、環境の三側面において複合的な効果を創出し、本市の持続的な発展につなげることであります。
プロジェクト1「臨海部コンビナートとともに挑む 市原発サーキュラーエコノミーの創造」では、ポリスチレンのケミカルリサイクルの実証実験に企業、市民、行政が一体となり、循環型経済の実現に取り組んでまいります。
この取組の効果としまして、環境面では、ごみの減量化や温室効果ガスの削減につながり、国が目指す2050年カーボンニュートラルへの貢献も期待できます。
経済面では、新たな産業分野での設備投資や雇用の創出による地域経済の好循環につながるとともに、社会面では、この取組を通じて市民や各種団体の意識が更に向上し、地域の活性化が推進されるものと捉えております。
次に、プロジェクト2「自然との共生 里山・アートを活かした持続可能なまちづくり」では、東京圏で自然豊かな里山暮らしを楽しめる本市の地理的優位性を最大限に活用するとともに、アートやチバニアンなど豊富な地域資源を更に磨き上げ、地域の活性化につなげてまいります。
この取組の効果としまして、社会面では、交流人口、関係人口の拡大による地域の活性化、経済面では、里山を舞台としたいちはらアート×ミックス2020+(プラス)の開催による地域経済の活性化につながると期待しております。
環境面では、里山活動への参画が促進され、里山や森林の適正な管理につなげてまいりたいと考えております。
次に、プロジェクト3「全ての子ども・若者に夢と希望を 子ども・若者貧困対策」では、子育て支援策の充実を図るとともに、子ども・若者が生まれ育った環境に関係なく、夢と希望が実現できる社会の構築に取り組んでまいります。
この取組の効果としまして、社会面では、貧困の連鎖を断ち、誰一人取り残さない社会の構築につなげてまいりたいと考えております。
経済面では、仕事と子育ての両立により、誰もが活躍できる環境を整備し、地域経済の活性化につなげるとともに、環境面では、この取組を通じて本市への愛着と誇りを醸成し、将来において環境活動など地域の担い手となる人材を育成してまいります。
「SDGsのシンボルとなるまち」の実現に向け、3つのリーディングプロジェクトを戦略的に事業展開することで、経済、社会、環境の三側面において相乗効果を発揮し、本市の持続的発展に積極的に取り組んでまいります。
多くの事業者や市民、様々な市民団体を巻き込んで、一緒に行動していくために、どのように周知を図っていくのか伺いたい。
企画部長 SDGsについては、市民、各種団体、企業、行政の全てが参画し、2030年のあるべき姿に向けて、バックキャスティングでイノベーションを起こさなければ達成できない挑戦的な取組であります。
SDGs戦略を今年度末に策定し、次年度からは具体的なプロジェクトを始動させるとともに、周知活動に戦略的に取り組んでまいります。
周知にあたっては、SDGsの背景となる問題を知っていただく「共有」、2030年のあるべき姿への「共感」、2030年を目指してともに行動する「共創」といったコンセプトを重視してまいりたいと考えております。
はじめに「共有」につきましては、広報誌での紹介など、多くの方々に言葉の意味、問題の背景を理解していただけるよう広報してまいります。
次に「共感」につきましては、市民、各種団体、企業など、それぞれの立場でSDGsを自分事化につなげていただけるよう「対話」を重視してまいります。
SDGsは、17のゴールという間口の広さが特徴の一つでもあり、市民、各種団体、企業等において、それぞれの活動で関心が高い社会課題から入り、対話を進めてまいります。
例えば、市民や各種団体に対しましては、カードゲームを活用したワークショップでの疑似体験や、出前講座で関心のある社会課題をクイズ形式で考え、気付きから行動変容につなげられるよう対話を取り組んでまいります。
また、中小企業の経営者につきましては、個々のビジネスへどのように反映できるか、こういった点に関心が高いことを重視しまして、周知活動を展開してまいります。
具体的には、SDGs達成に向けた包括連携協定を締結している三井住友海上火災保険株式会社と連携し、社会的課題解決のビジネス化をテーマとした経営変革ワークショップを開催してまいります。
さらに、SDGsの目標年度である2030年に、まちづくりの主役となる学生や生徒たちに、さまざまな機会を通じてSDGsを学んでいただきたいと考えております。
子どもが学んだことを家庭で話題にすることにより、親への波及効果も期待できることから、教育委員会や包括連携協定を締結している大学・高校との連携により、積極的な周知活動に取り組んでまいります。
最後に「共創」につきましては、これから始動するSDGs戦略に掲げたリーディングプロジェクトに多くの方々に参画いただくとともに、この取組の実績や成果を市民の皆様に実感いただけるよう取り組むことが、効果的な周知活動であると捉えております。
本市は、国内有数の石油化学コンビナートを擁する工業都市として発展してまいりました。
今後も、本市が持続的に発展し続けるためにも、2050年カーボンニュートラルという時代の流れを捉え、経済、社会、環境の三側面の掛け算により、化学反応を起こし、小出市長が掲げる「SDGsのシンボルとなるまち」実現に向け、SDGs戦略の周知啓発活動に全力で取り組んでまいります。