令和元年第3回定例会で渡辺直樹議員が代表質問

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1 市長の市政運営について
 (1)総合計画成果検証2018について
 今回、議会に市原市総合計画成果検証2018が示された。市長として、成果検証2018から見えた成果や課題は何か。

また、これまでの成果検証の取組について、どのように評価しているか、伺いたい。
■小出市長 私は、総合計画を中心としたマネジメントサイクルを構築し、全ての施策の成果及び課題を毎年度検証し、その結果を常に、計画・予算・改革に一体的に活かす、“変革し続ける行政経営”を推進しております。
 2018年度の成果としては、施策の取組成果を測る成果指標において、目標に向けて計画どおり進んでいる指標が多くを占めていることから、着実に成果として表れていると考えております。
 また、人口の推移では、様々な施策の展開により社会的要因による減少は鈍化しつつあります。
 しかしながら、当初展望した推計値と乖離している状況に強い危機感をいだいており、人口減少対策は、引き続き取り組まなければならない最重要課題であると捉えております。
 特に、将来のまちの原動力となる若者・女性をターゲットとした転出抑制、転入促進に積極的に取り組んでまいります。
 次に、これまでの成果検証の取組についての評価としましては、年3回のレビューを通じ、幹部職員から担当職員まで庁内全体で指標をもとに、今、何をすべきか、真剣に議論する組織に生まれ変わっていると、強く実感をしております。
 その結果、全庁的に課題を共有し、自分ごと化を更に進め、各部門が主体的に課題解決に取り組むとともに、あらゆる部門との連携による総合行政を展開し、市民本位の行政経営につながっていると考えております。 
 私は、この成果検証をもとに策定した変革方針
 2019により、更なる「変革と創造」を進め、総合計画を着実に推進し、都市像の実現に向け、全力で取り組んでまいります。

 (2)変革方針2019について
 市長として、この変革方針2019において、「変革と創造」に挑戦するための視点として、人口減少対策の強化を掲げているが、今後、具体的な取組をどのように進めていくのか、市長の考えを伺いたい。
■小出市長 人口減少の克服に向け、若者・女性の転出超過は最大の課題であります。
 私は、若者・女性が本市を居住地として選んでいただけるよう、いちはら版ネウボラといった切れ目のない子育て支援や教育環境の充実等による確かな教育の推進、若者・女性の雇用環境の充実などの施策を着実に推進をしております。
 人口減少対策の取組を、更に強化するため、新たな取組として、県内トップクラスのインセンティブを設けた「いちはら三世代ファミリー定住応援事業」と若者の結婚に伴う生活のスタートを支援する「いちはら結婚新生活応援事業」をこの 10月から開始します。
 今後、若者・女性をターゲットにした魅力あるまちづくりとしては、戦略的なシティプロモーションの展開などのソフト面の強化と、拠点形成の推進といったハード面の両面から重層的な施策を展開してまいります。
 さらに、人口減少対策等に重点化した個別計画として、次期まち・ひと・しごと創生総合戦略を基本計画の改訂と一体的に策定し、実効性の高い事業を実施し、人口減少対策の取組を「もっと前へ」の考えのもと、進めてまいります。

2 人口減少対策について
 (1)地方創生推進交付金活用事業における成果と今後の方向性について
 ①世界に一番近い「SATOYAMA」プロジェクトについて
 プロジェクトのこれまでの成果と今後の方向性について、見解を伺いたい。
■企画部長 本プロジェクトは、本市が羽田・成田の両国際空港の中間に位置する好立地を活かして、本市の豊かな地域資源である里山を、世界に一番近い「SATOYAMA」ブランドとして創出し、広域連携による交流人口の拡大を目指すものであります。
 本プロジェクトの成果につきましては、重要業績評価指標KPIとして設定している「小湊鐵道観光利用乗車人数」、「観光入込客数」、「地域団体による新規事業化数」の3指標において概ね目標値を達成しており、着実な成果が表れているものと捉えております。
 その要因といたしましては、小湊鐵道による房総里山トロッコ列車の運行、地域住民による鉄道沿線の景観整備、本市と君津市・大多喜町との広域連携による「房総さとやまGO」の実証運行など、多様な主体との連携により、観光地として新たな魅力の創出につながったものと考えております。
 今後の方向性といたしましては、地磁気逆転地層など新たな地域資源を活用した一層の魅力向上に取り組むとともに、自ら稼ぐ観光地づくりに向けたDMOの組織化やトイレ等の環境整備、広域連携の更なる推進、戦略的なシティプロモーションの展開など、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年を好機と捉え、本プロジェクトを積極的に推進してまいります。

 SATOYAMAプロジェクトやアート×ミックスなどの取組によって、市南部を訪れていただいた若者が、地域の魅力を感じて移住していただけるよう、その受け皿づくりにぜひ空き家を利活用した取組を考えていただきたいが、市の見解を伺いたい。
■企画部長 本市では、SATOYAMAプロジェクトにおいて、市南部地区を舞台に、若者による新たな事業の実施や、若者の定住化を目指す、地域おこし協力隊を平成29年度から導入しております。
 本市初の地域おこし協力隊として、精力的に活動されている高橋さんの取組を通じて、市南部地区に移住された方がいらっしゃるなど、この地域に関心を持つ若者も増えつつあります。
 現在、高橋さんが地域住民と連携して、空き家の実態調査や、空き家を活用した移住促進の事業プランの構築に取り組んでおり、市といたしましても具体的な支援策を検討しているところであります。
 市といたしましても、地域おこし協力隊とともに、市南部地区の空き家の利活用に向けた取組を積極的に推進してまいります。

 ② ICT活用による産地再生と高品質農産物生産プロジェクトについて
 ICT活用による産地再生と高品質農産物生産プロジェクトは、本市農業のブランド力向上や有害獣被害の防止などに向けた取組で、昨年度をもって3年間の計画期間が終了となったが、プロジェクト全体を通じての成果と、その成果をどう活かしていくのか見解を伺いたい。
■経済部長 本プロジェクトは、ICTの活用等による次世代農業のモデル事業を支援するとともに、農業被害をもたらす有害獣対策の強化、本市のブランドである「いちはら梨」の産地再生を行うことで、本市農業のブランド力の向上や担い手の確保、雇用機会の創出等を目指すものであります。
 本プロジェクトの成果につきましては、KPI指標である「次世代農業活用による雇用者の増加数」、「有害獣捕獲に取り組む町会の増加数」、「新しい梨の栽培方法を導入する農家の戸数」の3指標において、概ね目標値を達成しておりますことから、取組の成果が表れてきているものと捉えております。
 具体的には、耕作放棄地や中山間地域などの条件不利地における、ICTを活用した圃場管理や養蜂など農地を再生しながら収益を上げる仕組みの検証、専門家と連携した有害獣捕獲体制の強化、作業の省力化や早期の収益が見込める新たな梨の栽培方法の実証実験と農家への普及など、プロジェクトの掲げる事業が、着実に進められた結果であると考えております。
 今後は、こうした取組の成果を生産者や地域の団体と共有し、次世代農業や新栽培技術の普及促進、有害獣対策等をさらに推進することで、本市農業の持続的発展につなげてまいりたいと考えております。

 ③市原市の暮らしを彩る地域産業創生・人材育成プロジェクトについて
 地域産業創生・人材育成プロジェクトは、中小企業の経営基盤強化や起業・創業の促進、人材育成などに向けた取組で、こちらも昨年度をもって3年間の計画終了となったが、プロジェクト全体を通じての成果と、その成果を今後どう活かしていくのか、見解をお聞かせください。
■経済部長 本プロジェクトは、市民の雇用の受け皿となっている中小企業や起業・創業を志す方に対して、産業支援センターによる各種支援を行うとともに、女性や若者などの雇用機会の拡大と長期雇用に資する人材育成等に取り組むことにより、地域経済の活性化を推進するものでございます。
 これまでの3年間の成果といたしましては、KPI指標である「産業支援センターへの相談件数」、「支援を受けて起業した創業者数」、「資格取得講座の受講者数」の3指標において、目標値を大きく超えて達成しておりますことから、取組みの成果が表れているものと捉えております。
 具体的には、産業支援センターにおいて、相談の多い業種や相談内容を踏まえ、中小企業コーディネーターを増員するなど、センターの機能拡充を図り、相談しやすい体制づくりや、より細やかな創業支援を行ったこと、資格取得講座の周知方法を工夫するとともに、募集期間を拡大したことなどによるものと考えております。
 今後は、IOT・AI等のさらなる活用が見込まれる「第4次産業革命」や、働き方改革など、刻々と変化する社会経済情勢に迅速に対応し、市内産業が持続的に発展できるよう、このプロジェクトの成果をしっかりと活かすとともに、更なる施策の強化に取り組んでまいります。

 (2)若者・女性をターゲットとした施策の強化について
 今年度に取り組まれる基本計画の改訂や、新たな総合戦略の策定においては、市原市が若者や女性に選ばれるまちとなることを大きな狙いとして、まさに戦略的な施策や手法を組み立てていくことが重要であると思いますが、今後どのように施策の強化に具体的に取り組んでいくのか伺いたい。
■企画部長 今年度、人口減少対策等に重点を置いた個別計画として、『次期まち・ひと・しごと創生総合戦略』を基本計画の改訂と一体的に策定しているところであり、この策定過程において若者・女性のご意見やご提案を反映することが、大変効果的であると考えております。
 一例としましては、本市の若い世代が、自分たちのまちの課題を自分ごととして捉え、まちの中心部にある空き店舗や空き家などの遊休不動産を活用して、若者や女性とって魅力あるまちへ再生する「リノベーションまちづくり」のご提案をいただいたことから、新たな視点による取組も具体的に検討しているところであります。
 また、現在、活動中の地域おこし協力隊のお二人のご意見やご提案を伺うとともに、現在進めている君津市と千葉大学との共同研究において、今後、分析結果を基に若者視点による転出抑制・転入促進策等もご提案いただく予定であり、その結果も次期総合戦略に反映してまいりたいと考えております。
 さらに、総合計画審議会やいちはら未来会議でのご意見やご提案も総合戦略に反映し、若者・女性をターゲットとした施策の更なる強化を図ってまいります。

3 防災対策について
 (1)避難情報の発令について
 災害時に安全な場所へ早めに避難するためには行政が気象情報を収集・判断し、適切なタイミングで避難勧告等を発令することが重要であると考えるが、本市の避難情報の発令方法について伺いたい。
■総務部長 水害が発生する恐れがある場合、市民が自らの身の安全を守るための、正しい避難行動をとっていただくことが大切であり、そのためには、行政による迅速な情報収集と適切な避難勧告等の発令が、必要となります。
 特に、避難勧告等の発令にあたりましては、気象情報や災害情報の収集が重要となるため、発令が予見される以前から、国・県などから気象情報等の収集を随時行うとともに、銚子気象台や気象会社とも直接連絡をとり、最新の気象情報を収集しております。
 これら収集した気象情報等をもとに、国の「避難勧告等に関するガイドライン」を参考に定めました『市原市地域防災計画』の判断基準により、避難勧告等の発令を行いますが、今年6月からは、避難勧告等の発令を、5段階の警戒レベルを用いることで、市民の取るべき行動が、直感的にわかるよう伝達することとしております。
 避難勧告等を発令する具体的なタイミングといたしましては、「警戒レベル3 避難準備・高齢者等避難開始」は、注意報や警報などの発表状況、降雨状況や土砂災害危険度などの情報を収集したうえで、台風の暴風域に入る前や、夜間に警報発表の可能性が高まった場合など、避難に時間を要する高齢者等が安全に避難できるよう、日中の明るいうちに発令いたします。
 また、「警戒レベル4 避難勧告や避難指示(緊急)」は、避難対象地域全員の、速やかな立ち退き避難を求めますことから、河川水位が避難判断水位に達し、さらに水位の上昇が見込まれる場合や、「土砂災害警戒情報」が発表されるなど、市内に洪水や土砂災害の危険度が高まった場合に発令いたします。

(2)要配慮者への対応について
 一人暮らしの高齢者や障害のある人などはすぐに避難できないと思うが、このような避難に支援を要する方々に対しての対応について伺いたい。
■総務部長 本市では、災害発生が予想される場合に、避難に時間を要する高齢者など、避難行動要支援者が、安全に避難できるよう、日中の明るいうちに「警戒レベル3 避難準備・高齢者等避難開始」を、早めに発令し、公民館などに開設する早期開設避難所への避難を呼びかけております。
 しかしながら、高齢者や障がいのある方の中には、自力での速やかな避難が困難な方がいるという大きな課題がございます。
 そこで、平時からの共助の取組として、災害発生時において、自力で避難することが困難な高齢者等の方々について、町会や自主防災組織等の地域住民の皆様が、避難行動を支援する避難行動要支援者事業を推進しております。
 具体的には、個人情報の提供に同意を得られた要支援者について、町会・自主防災組織の御理解と御協力をいただきながら、毎年更新する要支援者名簿に基づく個別計画を作成することで、安否確認や避難の際の支援につなげております。
 また、この取組を実効性のあるものとするため、6月の土砂災害避難訓練や、9月の総合防災訓練では、避難行動要支援者の避難支援訓練を行うなど、災害発生時においても、地域住民の皆様が速やかに対応できるよう取り組んでおります。

 外国人の適切な避難行動につなげるためには外国人にも解りやすい情報伝達が必要と考えるが、市の取り組みについて伺いたい。
■総務部長 本市には、多くの外国籍市民が在住しており、近年は増加傾向にございます。
 また、東京オリンピック・パラリンピック等の国際大会や、アート×ミックス開催に伴う今後の外国人観光客の増加を踏まえますと、外国人への防災情報の伝達は、取り組むべき課題であると認識しております。
 そこで、現在市では、ホームページ上での外国人向け防災パンフレットの掲載や、7カ国語に翻訳できるマルチリンガル機能を利用した災害時の情報提供を行うほか、指定緊急避難場所等に設置する避難表示看板の多言語化と、外国人にもわかりやすいピクトグラム表示看板の設置など、言語や生活習慣が異なり、災害の知識に乏しい外国人に、適切な避難行動をとっていただくための取組を進めております。
 また、昨年11月に開催した津波避難訓練では、多言語による案内パンフレットの作成や防災講話に外国語の資料を用いるなどの取組を実施いたしました。
 さらに今年度予定しております訓練では、5カ国語に対応した緊急地震速報や気象特別警報がプッシュ型で通知される、観光庁監修の無料災害時情報提供アプリ「Safety tips(セーフティ・ティップス)」を紹介し、積極的な利用を呼び掛けてまいります。
 

今後も、国や先進自治体の事例を収集するほか、ICTなど先端技術の活用を検討するなど、外国人の適切な避難行動につながる情報伝達に努めてまいります。

(3)河川水位の監視体制について
 市が所管する河川も多数あると伺っているが、水位情報の把握が必要な河川と現状の監視体制について伺いたい。
■土木部長 本市が所管している河川は、先程お話がありました通り、河川法の規定の一部を準用している「準用河川」が5河川、河川法の適用を受けない「普通河川」が48河川と合計53の河川がございます。
 これら市が所管する河川のうち、重要水防区域の他、住宅に隣接し、過去に道路冠水や床上・床下浸水が発生した箇所を含む5河川8箇所について、水位の状況を確認しております。
 具体的には、準用河川では、今津川、三枝川、戸田川、普通河川では、白幡川と深城川でございます。
 次に、現状の監視体制についてですが、台風や大雨など河川の増水が予想される際には、職員が水位測定箇所を巡視し、直接水位を測定するなど、河川の状況把握に努めております。
 また、水位等の情報については、現地の職員から本庁にいる職員へ無線や携帯電話により報告し、庁内での情報共有を図っております。

 市が管理する河川においても、逃げ遅れによる人的被害をなくすためには、今後どのような監視体制をとるのか見解を伺います。
■土木部長 議員ご指摘のとおり、逃げ遅れによる人的被害をなくすためには、適切なタイミングで避難勧告を発令することが重要となります。
 また、台風や大雨の際は、限られた時間や人員で、広域的な巡視を、迅速かつ正確に実施しなければならない状況であります。
 さらには近年では、頻発するゲリラ豪雨などにより、急激に水位が上昇するなど、その対応も必要であると考えております。
 このような中で、水位計については、一定の水位を超えた時に観測モードに切替わり、10分毎に水位データを送信するなど、洪水時の水位観測に特化した低コストの製品が開発されてきております。
 このことから、現在、これら新技術の導入も視野に入れながら、監視体制の強化について、検討しているところでございます。
 今後も、市民の生命と財産を守るため、関係部局と連携を図りながら、監視体制の強化に取組んでまいります。